そのような高齢者の方のお気持ちを優先し、間取りは変えずに、快適性と安全性の向上を図る断熱リフォーム・防犯リフォーム・バリアフリーリフォームの注文住宅の設計ポイントと設計実例を紹介しています。
数十年前の住まいでは、そろそろ建付けに不具合が出てきたり、そもそも断熱材が不十分であるために隙間風などが入り込み冬は寒い室内であることが多かったりします。断熱効果の改善を行うだけでも身体に優しい居場所が生み出すことができます。
工期と費用を抑える ために、既存の床下地材を撤去せずにバリアフリー対策をするポイントや、天井下地材や既存の内壁・窓を撤去しないで断熱性を高めるリフォームの設計ポイントと設計事例を紹介しています。
リフォーム会社に高齢者向けリフォームの相談をされた際に、すぐさま『 間取りの変更の提案 』を受けたとのお話を聞きました。しかし、お住みになるご本人は、本当にそれをご要望されていたのでしょうか。
他の人には動きづらい動線や間取りでも、ご本人にとっては住み慣れた間取りは変えたくない場合もあります。特に高齢者の方には新しい動線にする事に、とまどいや不安を感じられる事が多々あります。
高齢者の方にとっての一番の願いは、できるだけ自分の足で家の中を移動でき、なるべく自分だけでトイレや入浴など身の回りの事がしやすいように住まいの環境を整え、心身の健康を維持する事だと思います。
高齢者向けリフォームといっても、高齢者中心のお住まいか、二世帯でのお住まいかによって、リフォームの主旨が大きく異なります。
二世帯住宅であれば、介護や双方の関わり方を中心に、子世帯の住まいの充実や長期の住宅活用を見越して計画する必要も出てくるでしょう。
高齢者中心の場合は安全面や快適性の向上を中心にした方が、リフォーム後の生活が受け入れやすく、満足度が上がる場合が多くあります。
最近は別居の親の住宅をリフォームしたいとのご相談が増えています。離れているからこそ心配な点が出てきたり、今はまだ元気でも今後の不安を解消したいとの思いで、シニアリフォームを検討されています。
そこで問題となるのが、リフォームの範囲。
同居や引き継いで住む予定がある住宅は、リフォーム後の長期活用が見込めますが、その予定が無い場合は、費用対効果が懸念されます。
・バリアフリー化のリフォームが最優先事項
・段差などの目に見えるものだけでなく、温熱環境のバリアフリーも大切
・費用と工期を抑えるために、解体工事はできるだけ減らして、既存の床や壁・窓などを活かしましょう。
当ページにて、設計実例をあげながら説明しています。
当事務所では提携の税理士事務所を紹介していますので、前もってご相談されることをお勧めします。
高齢者向けリフォームでは、断熱性能の向上を図る事も大切ですが、心身の負担を軽くするために工期を短くする事も大切です。
当ページでは、【既存の床下地材・天井下地材や既存の内壁を撤去せずに、断熱性を高める方法】について説明しています。
床を支える基礎部分(床束・大引き・根太・合板)は既存利用します。
床下地材はそのまま として、表面を覆う既存のカーペット・畳を撤去して、下地材の水平レベル調整するとともに断熱材を設置した上でフローリングを敷き、バリアフリーの床を構築いたします。この時、ご予算に余裕があればフローリングに組み込まれた電気式床暖房を導入いたします。
既存の外壁の室内面に、断熱材(スタイロフォーム)と石膏ボード・珪酸カルシウム板・コンパネなどの 複合板 であるスタイロパネル(ダウ化工株式会社 商品名)を貼ります。 ただし、内壁面で不陸・凹凸が生じているので木製胴縁(厚さ18mm~)を以って下地調整を行い、その上に壁紙:クロス・タイル・キッチンパネルなどの仕上げ材を張ります。
▶ 長所 は、既存の外壁を取り壊さないので、解体費の低減・工期の短縮化 が図れます。⇒ 工事費の低減 につながります。
▶ 短所 は、既存の外壁の室内側に新設の内壁を張るので、室内側に片面で【横胴縁(厚さ18mm~)】+【断熱材:スタイ
ロフォーム+石膏ボード(37.5mm)】の分として約60mmの厚みが出ます。
その分だけ 部屋の面積 が小さくなります。
スタイロパネル:断熱複合版(ダウ化工㈱)
スタイロパネルシリーズは、ベニヤや石膏ボードなど建築に必要な資材とスタイロフォームを貼り合わせた二次加工品です。
下記写真がサンプルです。
旧の天井下地はそのままとし、天井裏に断熱材を組み込み天井表面にはクロス等を張ります。
外気が接する窓と室内側の窓の間に空気層を設ける事で断熱性を高めます。既存のアルミサッシの室内側に内窓を設置すると費用や工期を抑えて開口部の断熱リフォームが出来るだけでなく、古くなったサッシの枠を隠すことができます。
寝室:二重サッシを閉めている状態
寝室:二重サッシを開けている状態
室内側の二重サッシを開けている状態
寝室:二重サッシを開けている状態
既存のサッシに組み込まれているガラスを防犯ガラスに取り換えると防犯性が高まります。
防犯ガラスには2枚のガラスの間に、強靭で厚い中間膜や特殊な板(ポリカーボネード板)をはさみこんでいますので、ドライバーによる「こじ破り」、バールなどによる「打ち破り」に高い抵抗力を発揮します。
各社防犯ガラスには、防犯ガラス認定のシール(CPマーク)が貼られているので、空き巣などの窓破りの被害を抑止することが出来ます。
玄関などの段差の大きい箇所や、トイレ・浴室など狭いスペースで立ち上がったり座ったりと体勢を変えないといけない場所では、手すりを設置して、身体を支える事ができるようにします。
手すりをつける際には、つかまりやすく、力をかけやすい位置に、握りやすい形状で設置する事が大切です。
また、手すりの設置にあたっては、しっかりと壁の下地工事を行い、丈夫な手すりを設置しましょう。
毎日過ごす家は、安心・安全に暮らせるようにしたいものです。 しかし、住宅内での事故は意外と多いのが実情です。
住宅内で段差が大きいのが玄関。 特に、築年数の古い住宅の玄関は、上がり框が高い傾向にあります。
昇り降りしやすい高さになるようにリフォームの時に 式台 などを設置して、段差の軽減を図ります。
この際、一段当たりの高さ(蹴上げ)は、玄関ホールの床仕上がりの状態により異なりますが、約18cm以下が理想と考えます。
玄関ホールに上がる高い段差を解消するために新設した式台
式台と手すりバーで上がり降りしやすく
ヒートショック。
家庭において入浴時に多く急激な寒暖差により、
心筋梗塞などを引き起こします。
特に65歳以上の高齢者に顕著です。
これらが懸念される部屋として、
玄関ホールや廊下、洗面脱衣室が挙げられます。
そのような部屋や廊下にも温度差を感じさせない対策として、
床暖房やその他の暖房機器設備の活用があります。
長い時間滞在しないと思っていても、
高齢者の住まいを考えると備えておくのも一考です。
気象予測情報にもとづく家の中での
ヒートショックのリスクの目安は、
一般財団法人日本気象協会による
「ヒートショック予報」というサイトがあります。
毎日更新され、各地域ごとに
「油断禁物」「注意」「警戒」の
3段階で示されています。
ちょっと冷え込むなと感じられたときは、
このようなサイトをご参考に。
一般財団法人日本気象協会「ヒートショック予報」
建具は開き戸よりも引き戸の方が身体の動きが小さくて済むので、高齢者や身体の不自由な方にも使いやすく、また車いすでの生活になった場合でも通路が広く取れます。
また高齢になると指先の力が弱まるため、つまむ、まわすなどの作業が難しくなります。
握力が弱くても掴みやすいように、軽い力で開くことができる大きめの取っ手(ハンドル・掘り込み引手など)をつけると、スムーズに開閉ができます。
高齢者向けリフォーム・シニアリフォームの場合、フローリングの種類は今後の介護の事を考えて選ぶ事が大切です。無垢材は自然素材ならではの風合いや温かみがありますが、傷がつきやすく、収縮がおこりやすiいため隙間や割れが生じやすい素材です。
また、コルクタイルは表面に目に見えない細かな気泡があります。この気泡により適度な弾力性がある反面、無垢材と同じく、隙間などに水などがしみこみやすいというデメリットが生じます。
合板フローリングは、その点 表面が平滑で掃除がしやすいですが、足触りがかたく冷たいというデメリットもあります。
何を優先するかをきちんと見極めて素材を選びましょう。
ファンヒーター・ストーブなどのような暖房器具を置くとその面積が必要となり、器具の倒壊、けつまづいたりして不慮の事故が想定されます。燃焼装置がないのでメンテナンスが不要であり密閉された部屋の空気も汚すことなく、臭い・燃焼音がないので家族みんなが快適に暮らせます。
床暖房は、限られたスペースを極力有効に活かすことができます。また、床暖房には、温水式と電気式があります。
費用・設置条件を考えると電気式床暖房の方が良いと思いますが、欠点は電気料金が上がる事です。
年を取ると視界が暗くなるため、部屋を明るくするようにしましょう。
窓からの陽射しが奥の部屋まで届くように、ランマを設けたり、透光性のある建具を用いると、昼間なら照明をつけなくても過ごすことができます。
また、壁や天井のクロスを白系にすると、明るく見えるだけでなく、広がりも感じられます。
下記の写真のリフォーム設計実例では、玄関からキッチンにつながる引き戸を光を通す乳半色のドアにすることで、玄関に明るさをもたらすだけでなく、閉塞性も和らげています。
自然素材に囲まれた住まいは心身共に気持ちのよいものです。
そうはいってもできない場合もあります。
高齢者住宅や介護が必要な住まいの場合です。
車椅子での移動のスムーズさタイヤによるヒールマークのような汚れ対策、
食べこぼしや排泄などさまざまな汚れや匂いの対策をしなければなりません。
無垢のフローリングであれば、掃除などの手間など大変になり、
介助者のストレスがたまっていく一方です。
このような場合は、新建材で目地などはない塩ビシートを提案しています。
塩ビシートは、素材どうしの継ぎ目をなくすことができ、
床面や目地の汚れを簡単に拭き取ることができ、清潔さを保つことができ快適です。
現在では無機質な素材感ではなく本物と遜色ない再現性があり
フローリング柄などのバリエーションも豊かなので
理想に近いインテリア空間を作り出すことができます。
介護の効率化はもちろん、介護する側・される側の快適に住まう本質に
迫ることができる様になりました。
そして、介護が必要でなくなったときに
次に住まう人がフローリング材を採用したいということであれば、
床の下地材の施工などに工夫を施しておくと実現できます。
建築家の提案だからといって是が非でも自然素材にこだわっているわけではありません。
もちろん、無垢フローリングを採用したバリアフリー住宅もございます。
お客さまとの対話の上、住まい手のためになる提案をして決定しています。
お母さまの『 現状の暮らしぶりのヒアリングと観察 』をさせて頂いたうえで、これからの住宅の活用や費用対効果をふまえて、バリアフリーと断熱対策・防犯対策を中心に高齢者向けリフォームの計画をしました。
・断熱材・調湿建材・床暖房やベースボードヒーターの設置による生活空間全体の温熱環境の向上
・浴室・トイレ・洗面台も使いやすく手入れのしやすい商品に一新
・自然の光や内装材の一新による明るい空間づくりの提案
・手すりの設置や床の段差解消を図ったバリアフリー化
・防犯ガラスへの取り換えなどの防犯対策
★ お客様から工務店への感謝のお言葉
住みながらのリフォームの為、『 母親の身を案じたきめ細かい対応、有難うございました。 』で工務店の皆様方が作業を進めて頂いたことに、娘様より謝意のお言葉を頂きました。また、お引渡し後に、お二人から笑顔でお見送り頂きました事に感謝申し上げます。
★ お客様から当設計事務所へのメール
『 リフォームはこの暑い夏に間に合い、思いがけず助かりました。二重窓のおかげでエアコンの効きが良いですし、暑さもかなり遮られて熱中症にならずにすんだように思います。リフォーム後は、母親の体調が安定した様に思えます。』
Before ⇑ ⇑ ⇑
ー リフォーム前 -
暗いイメージの寝室
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ー リフォーム前 -
寒かった寝室
▶ 外壁の室内側の壁や床に【 断熱材 】を施すとともに、【 内窓 】の設置、隙間風が入り込んでいた部分の対処を行いました。
断熱リフォームをすることで、冬の寒さ対策だけでなく、夏場の冷房も効きやすくなり熱中症対策や省エネにもなります。
▶ ダイニングテーブル周りは食事の時だけでなく、くつろいだりテレビを見るなど生活の中心であるとお聞きして、【 床暖房 】を設置して足元を暖かくして過ごせるようにしました。
▶ 壁や床は表面材の撤去にとどめて、下地材などを活かして断熱材を施工することで、費用と工期を抑えています。ご高齢の方には、工期が長くなると、その分心身への負担が大きくなりますので、全体のバランスを考慮したリフォームを計画しました。
▶ キッチンには火の気がなく安心・安全なIHヒーターを組み込んだシステムキッチンを設置。使い勝手は今までと同じ動作で行えるようにプランニングし、商品を選定をする事で、リフォーム後のとまどいを軽減しています。
Before ⇑ ⇑ ⇑
ー リフォーム前 -
暗いイメージの食堂
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ー リフォーム前 -
暗く火災の心配があるキッチン
▶ メモ用紙・介護予定表などを壁に無作為に貼られていましたので、見やすく整理できるように壁の一部に掲示板スペースを確保。
掲示板の材質は安全性を考慮して、磁石がつく石膏ボード( 右写真のF )を提案。
画鋲を使わないので壁に穴傷ができず、針先でケガをする心配がないので、高齢者の方にも安心です。
カレンダーや、小袋類の多少重たいものは、ピクチャーレール( 右写真のE )のフックに吊り下げられるようにしています。
上がり框が高く、昇り降りしにくかった玄関には、式台と手すりを設けて身体の負担を軽減しました。
あわせてベースボードヒーターを設置して、あたたかい室内から廊下に出た時にヒヤッとしないようにしています。
ヒートショック対策は忘れがちなポイントですが、急激な室温の変化は身体に大きな負荷を与えます。
温熱環境のバリアフリーも大切です。
Before ⇒ ⇒ ⇒
After
Before ⇒ ⇒ ⇒
After
【 ベースボードヒーター(右写真の中央右)】
冬の寒い時、トイレや脱衣室での着替えはヒートショックを起こす原因となります。廊下・脱衣室・トイレに足元付近を温めるベースボードヒーターを設置して温熱面でのバリアフリー対策を施します。
ベースボードヒーターは、故障時や取り換えなどのメンテナンスの軽減を見越して、壁に埋め込まずに、邪魔にならない場所に取り付けました。
▶ 外壁内側に断熱材(スタイロボード)を施すと共に、既存の窓に内窓を設ける事で外気の温度が直接室内に伝わる事を軽減。
▶ 既存の内壁には室内の湿度を適度にコントロールし、結露の発生やカビ・ダニの増殖を抑える調湿建材を張りました。
▶ 床は既存の下地材の水平レベルを調整した上で、断熱材を設置しフローリングを敷く事で、断熱性を高めると共にバリアフリー化も図りました。
【断熱リフォーム+調湿建材の活用】で、快適な室内環境を生み出すだけでなく、省エネ効果も高めています。
※ 夏期・梅雨期の湿度上昇による蒸し暑さを抑制するので、熱帯夜などのエアコンの使用を軽減し省エネ効果が期待できます。
(調湿建材・ブレースボード:新東北化学工業HPより)
《 スタイロフォームと石膏ボードの複合版 》
《 既存内壁の上にスタイロパネルを設置》
既存サッシの内側に内窓を設けて空気層を作り、外気温が直接室内に伝わる事を軽減します。あわせて既存サッシのガラスを防犯ガラスに変えて、防犯対策も図っています。さらに内窓を設ける事で古いサッシを隠して、リフォーム後の室内との調和も図ります。
キッチン前:二重サッシを閉めている状態
キッチン前:二重サッシを開けている状態
通常コンセントは床より約15cmですが、身体に合わせて利用しやすい高さ(約30cm~約60cm位)に設けると掃除機などの使用時に腰をかがめなくて済みます。
・断熱リフォーム :外壁の内側の壁・床・天井への断熱材の施工や二重サッシの設置による断熱性の向上
・防犯リフォーム :単体ガラスから防犯ガラスへの変更
・バリアフリーリフォーム:建具の変更と床の段差解消、玄関の段差軽減
大阪の建築家が創る家・注文住宅の設計は、住み始めてからも愛着がまし、共に過ごす時間を楽しんで頂けると思います。
ビル・マンションの設計、家づくり・住宅設計でこだわりの建築を大阪の無二建築設計事務所:建築家と叶えてみませんか。