キッチンの煩雑さをリビング・ダイニングに持ち込まない食器棚のつくり方
食器棚に求めたことは、機能性と意匠性。
ここでの機能とは、
・収納量や電子レンジや炊飯器が置ける棚であること
・LDとの仕切り:
空間ではつながり広さを感じつつ、キッチンの煩雑さは視界からカット。
です。
何から考えたか。考えることは何か。
・食器棚の幅、奥行き、高さ(棚と仕切り)
・食器棚の面材
です。
●幅
できるだけたくさんとりたいと思いました。
LDとの空間を隔てながらも、
キッチンにはどちらからも行ける回遊性を持たせたいと思うと、
3m確保することができました。
そこそこのボリュームです。
●奥行き
食器の取り出しやすさや電化製品が置けること、
空間を有効活用したいなどを考慮して
できるだけ深くなりすぎないように、隔て板込みで450mm。
●高さ
棚板は床から700mm。椅子を置けばテーブル代わりにもなるように。
隔て板の高さは、
オーブンレンジを置いてもLDから見えないサイズ
かつLDKの一部からの圧迫感を与えない高さ
ということで、床から1,150mmとしました。
(当初の電子レンジ。こじんまりとしてましたね~)
(この機種ではなかったですが、こういうのを想定しての設計でした)
●棚の内容床に近くなるので扉を設けて、ほこり対策です。
(思いのほか、ほこりが入ってきます)
どんな食器があるかは見えてほしいのでガラスの引き戸。
蹴飛ばしては大変なので、巾木くらいは床から上げておきます。
一部、オープンにしてゴミ箱や新聞紙の収納にしています。
●面材
キッチン側はシナ合板にクリア塗装でいこうとすんなり決定。
(奥がシナ合板です)
問題はLD側です。
これは悩みに悩みました。
幅3mもあり、かなり主張するボリューム。
「空間になじむものは何か」がテーマとなります。
他の扉と同じくラワンベニヤに塗装として素材の調和とするか、
キッチンと同じくステンレス、
アクセントに試したい素材:黒皮鉄、版築、しっくい、CON打放し…
どれも主張しすぎでもリュームが消えない。。。
「このボリューム、消えないか?」
消えないけれど溶けることはできるかも、
ということで、「ミラー張り」に決定。
ここにきて奇抜なイメージですが、想像以上に「消えて」くれました。
3m分のミラースクリーンはなかなかも代物です。
(制作担当の家具やさんも担当者以外もそれ見たさにきていました)
キッチン廻りの素材
キッチンの壁は当初モザイクタイルにしようと思いましたが、
掃除の観点と一貫した見た目で、
キッチンに併せてステンレスのキッチンパネルにしました。
フローリングは油はねや水汚れ対策に
タイルにしたり、フローリングにクリア塗装などを求められますが、
ナラ無垢フローリング無塗装のまま。
(無塗装フローリングについては別の機会に)
素材を変えると、素材同士の納まりが難しく
一体感が薄れるなどにならない考慮しています。
(無塗装のナラ材。奥の丸いのがコンベックスでナラのクリア塗装。
何かを塗布すると色味が違ってくるんです)
10年経ったいま
システムキッチンはそれなりの汚れはありますが、
10年経った今も現役バリバリです。
オーブンレンジや炊飯器などは新しく買い換えましたので
食洗機があれば、取り替えはあったかもしれませんね。
引き出し式の棚なので、タオル掛けが付けづらく、
吊り戸棚に付けている現状です。
見た目はあまり。。ここは実用優先で。
食器棚はミラー部分は思った以上に圧迫感はないです。
部分的に子どもの掲示板状態になってはいますが、
それはそれで面白い感じになっています。
(縁側を通れるので回遊性があるキッチンになっています)
内部の棚はそれなりの収納力を持っています。
隔て板の厚み35mmとすっきりとしていますが、
天板はもう少し奥行きを持たせた方がオーブンを置くにはいいかな。
高さはこれ以上になると圧迫感を与えると思います。
この高さだと、キッチンの煩雑さはLDからは見えません。
(枠のディテール。ステンレス・バイブレーション。厚み35mm)
天板は計量したり、料理本見たりデスク代わりになっていますが、
欲をいえば、収納部分よりもう少し奥行きを持たせたら座りやすいかな
(でも幅が大きくなる、せめぎ合い)
高さはキッチンの850mmにあわせた方が作業しやすかったかな
(でも高さが高くなる、せめぎ合い)
フローリングはもちろん油はねやいろいろとシミはできていますが、
すぐに拭き取ったり掃除するので、
思ったほど汚いと感じません。むしろ自然です。
油を吸い込みいい感じと超ポジティブに。
(床のいま。奥はコルクを敷いています。床については別の機会に)
総合的に、家族に合った(もしくは順応できている)
キッチンと言えるかなと思います。
普段の生活を大切にする。だから見えてくるもの。
ここでも、蔵書問題を解決した本棚のように
システムキッチン以上に食器棚のボリュームをどう解決するかが肝
となりました。
ミラー張りという一見、住宅に使うものとしては奇抜なアイディアですが、
環境が溶け込んでいき、むしろなじみやすい素材であることを
実感できました。
新しさすら感じました。
これまでの経験はもちろん大切ですが、
やるからには何らかの「新しさ」をもたらしたい。
そうすることで、
普段の中に変化が生まれて自分の等身大や可能性を広げていくんじゃないか
と思っています。
【追伸】
この食器棚は本棚とともに
建築知識2019年3月号「図解リノベーション大百科」に
取り上げられました。
これまでに関わったキッチンです。
「暮らしの必需品|台所/キッチンと どのような関係で暮らしますか?」