大阪市内の街中に築35年で鉄骨鉄筋コンクリート造14階建のマンションの1戸の専有部分のスケルトンリフォーム。
既存部分はは4DKで各室に窓が設置されているけれど風の通り道がない間取り。マンション住まいをしていた経験から、住まい手にとっては風の通りが必要と感じていました。
風の通りを得るには、既存の間取りをすべて取り払うスケルトンリフォームが最善と考えて取り組みました。
マンションの設計が画一的といわれる原因は面積をできるだけ取ることや部屋の数を増やすこと、至れり尽くせりと想定された機能や収納の確保に注力している結果だと考えています。そういう努力をするのではなく、もっとおおらかにデザインして自分たちらしい暮らしをしたいと思いました。共用廊下に隣接する部屋を止めて玄関にしたり、効率化を図った廊下を止めてみたり、そもそも部屋という考え方を止めてみたりとマンションらしいコンテンツから離れてみました。
共用廊下とバルコニーがつながれば空気は流れるので、スペースの配列や壁があるか・ないかを考えた空間構成にしました。そのために間仕切るドアや障子は引き戸にしました。
また風の流れを遮断できる工夫をすることで空気層が生まれ断熱効果を上げることができます。
手足が触れるところは天然木や金属を使うことや壁や間仕切りに黒皮鉄や紙、木毛セメント板など経年変化する素材を極力使うことで様々な素材や要素を組み合わせてできた景色の集合体はこの家の原風景となり住まいに豊かさをもたらしてくれるものと考えています。
また家族の成長によってスペースが変化しそうな空間には構造用合板の床にして将来的に工事しやすい設えにしています。
「寝て一畳、立って半畳」の言葉通り、自分が同時にいろんな部屋に居るわけはないので、大きく機能で空間を分けるだけで快適にできるのではないか、すなわち寝るところとくつろぐところが分かれていればよいという結論に至りました。
居間にはジョージ・ナカシマのデザインしたウォールナットの家具を将来的に置こうと決めて、その色調に合わせた色調にしています。木質のインテリアで陥りがちな山小屋のような雰囲気ではなく、適材適所で木の色を分けました。単色にするとボリュームが多くなりカラーバランスが重くなるので、2色程度の色分けでバランスを分散させました。
夫婦とも本が好きなので本が多いので書庫をるくろうかとも考えましたが、限られたスペースを考えるとそのような個室はつくれない。本をしまい込むのではなく積極的に見せて書架が居間の中心となるアイテムとしてとらえました。本のサイズに合わせて区分して、棚板はすぐにつぶれないような厚みにして、さらに書架に加えてちょっとしたテーブルや腰掛、TVボードを兼ねるようにデザインしました。
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Before
・鉄筋コンクリート住宅の構造体のみを残して内装全てを解体撤去し、新たな「品」と「価値」を加えて、用途や間取りを一新。
・新しいコンセプトのもと、建築家のアイデアとデザイン力で創り上げたスケルトンリフォーム・リノベーションの設計。
・老朽化した建築物や設備のメンテナンスに加え、断熱性の向上やバリアフリー化も図った注文住宅の設計。
キッチンと居間を隔てるため収納力のをもった長さ3mの特注食器棚をデザインしました。存在感があるのでできるだけ軽減したいと考え、ミラー張りにしました。一見奇抜ですが、周囲の風景を映し出すので奇抜ではなくむしろ空間に溶け込んで重さを感じさせません。
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Before
日本の住まいには畳の間で構成されていました。その畳の間では食事をしたり、くつろいだり、寝間としたりとユニバーサルな空間として活用されていました。
今回の設計でもこの考え方を踏襲して、個室として扱うことができたり、それ以外のときはリビングの延長として広がりをもたらします。
リビングと廊下は障子で仕切りすべて引き込むことができます。その障子の取り合いには柱を設けました。この柱があることで、奥行きが認知できて広がりを感じることができます。一見邪魔者のように扱われがちですが、同じ面積でもある場合とない場合では意外と違うものです。
また「柱のキズ」をつけることができるので子どもの成長の記録として一役買っています。
和室をリビングに隣接させるのはよくある手法ですが、さらに玄関に隣接させ廊下をうまく使い障子を閉めると独立性を保った客間にもなります。間取りによってハレの間にもケの間にもなる和室ならではのユニバーサル空間の特性が現れます。
客を招く間取りとしての和室―客とは誰でしょう?来客はもちろん、親の介護に、子ども部屋に、はたまた自分の臨時の個室として。ハレとケにも捉え方はさまざまです。
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Before
リフォーム・リノベーション前:洋室
内装を解体し鉄筋コンクリートの構造体を露出した状態
玄関を開けてすぐに廊下が見えるマンションのよくある風景を離れるために壁を設けました。その壁は経年変化する黒皮鉄の板にすることで時間を感じることができるのと同時に、木と白を基調とした色調にアクセントとして引き締め、玄関の気持ち的な切り替えを同時に果たしてくれています。
造作下足箱を壁面全体に設け収納力を上げています。その扉はミラー張りにして姿見としての役割を与えています。
また土間的スペースを極力少なくして床上げ部分を多くしています。これによりコンクリート躯体の床の面積を減らし断熱効果を上げるように配慮しています。
リフォーム前の玄関
寝室には床材を変えることでLDKと変化をつけました。LDK床のナラ材と変わり大きな柄の構造用合板を用いることで空間と気分にON/OFFが付けられます。また将来的にスペースを仕切る工事がしやすいようにも配慮して選定しています。
収納スペースには扉ではなくカーテンを用いました。開閉時の省スペース化とフルオープンにしやすい機能性を併せもった点が採用のポイントです。
今回のリノベーションでは既存図面に現れていなかった配管が出てくるアクシデントもありましたが、それをまたインテリアの一部として積極的に捉えています。
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Before
リフォーム・リノベーション前:旧の和室
リフォーム・リノベーション前:壁を解体して配管が現れた状態
空間の演出に一役買う間接照明(建築化照明)。ここでは寝室の天井を照らす際に用いました。これによって、寝転んだ際に照明器具の光を直接みないので目に優しいです。
思っている以上に空間は明るくなるので、ダウンライトなどの設ける必要はなくスッキリしたミニマルな空間演出に最適です。
朝起きてまずすることは洗面所に行って顔を洗う―一日のはじまりは自分らしい空間でという思いから、洗面台と収納ミラーはスッキリとしたオリジナルのデザインにしました。
街中の中古マンションは周りもマンションが多いので窓の外は絶景ではありません。また古いマンションなので窓は腰窓でバルコニーへ出るためには何らかの段差がないと困難です。この二つの問題点を解消するために考えた結論が縁側のような段差を設けること。そしてその段差を活かして間接照明を設けました。
また外壁側の壁は断熱性能の向上と見た目の面白さを考えて木毛セメント板にしました。障子で仕切られたことで空気層が生まれさらなる断熱効果が得られ、障子を開けた時のテクスチャの肌理の違いが空間に奥行を得てくれました。
二つの窓が大きな一つの開口部のように見えるように5枚の障子で仕切るように考えました。そうすることで、連続性のあるスクリーンのように空間をまとめ上げ、さらに床からの間接照明が障子を伝って柔らかく照らす雰囲気は安らぎや落ち着きを与えてくれ居間に最適のライティングになりました。
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Before
リフォーム・リノベーション前:
リフォーム前は腰窓のためバルコニーへ行くには段差を解消しなければなりませんでした
こだわりの住宅設計で新たなライフステージを
居間と寝間を明確にゾーニングした構成です。
マンション設計のよくある考え方で部屋の面積を大きくするために極力省スペース化している無駄空間とされている廊下をこの計画では積極的に設けています。歩く距離を長くとることで奥行を持たせ広がりを錯覚させる効果を狙っています。
縁側もマンション設計では無駄空間に当たります。しかし、この空間があるからこそ、この家のデザイン的にも断熱効果を上げるという機能的にも向上させるのです。
大阪の設計事務所が創る家・注文住宅の住宅設計は、住み始めてからも愛着がまし共に過ごす時間を楽しんで頂けると思います。
ビル・マンションの設計、家造り・注文住宅の設計でこだわりの建築を大阪の建築家:無二建築設計事務所と叶えてみませんか。